2004年11月11日

メモ

 個人的メモ。傍若無人本末転倒意味不明。
 
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2004年11月07日

E.E.E.008

 毎日書ける訳がありませんでした。やっぱり書きたい時だけ書こう。
 いきなり“死んだ世界”の話を持ってきたので違和感が。構成考えてないからなあ。この話の前、家を出た辺りでワンクッション置いておくべきか。

− ─ ── ────────── ── ─ −

 気が付けばそれはあった。
 目が覚めてからずっと付き纏っているそれは、不確かで、不透明で、不鮮明で、しかしその存在を暴力的なほどに主張していた。意識の片隅、何時もは空白になっている部分はそれに押し潰され、今なお奇妙な圧迫感すら感じさせる。

 それは、どうしようもない――違和感。

 ただ景色を眺めているだけで全てが遠く見える。空気の感触が違うように感じる。風の匂いが。踏み締める大地の感触が。見上げる空の色が。全てのものに違和感を感じて落ち着かなかった。
 そう、まるで別世界へと迷い込んでしまったような――。
「都樹?」
 はっとして視線を移すと、沙彩が眉を顰めてこちらを眺めている。
「いや……」
 その何気ない問いかけに、仕草に、彼は心から安堵した。
 変わらない。沙彩は変わらずにそこに居る。たったそれだけの事に、これほど感謝した事はないだろう。
 ――何時もの様に自分に話しかけ、傍に居てくれる。だから、自分も何時もの様に振舞わねば。
「なんでもない」
 そう言って笑うと、沙彩はそれ以上追求してこなかった。
 無論、長い長い付き合いだ。何でもないと言葉で伝えたことろで誤魔化されないだろうし、そもそも表情に出ていなくても相手の考えが大体読めるような仲である。当然、沙彩も何でもないわけがない、と思っているだろう。
 それでもあえて誤魔化すのは、つまりは何も聞くなと言う言外の拒絶。
 今は話せない。話す事が出来ない。だから聞かないで欲しい。そう言う、二人の間での暗黙の了解だ。
 だから、その後は表面上何事も無いように会話を続けた。
(……でも、これは)
 この狂おしいほどの違和感は、一体何なのか。
 考えても解る筈はないと判っていても、都樹はその事を考えずには居られなかった。
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2004年10月30日

E.E.E.007

 体調持ち直したけど、とにかく書けない現状。
 原稿用紙1枚。

− ─ ── ────────── ── ─ −

「で、高等部はどっちだっけ」
「学校は西区だから、この道を左に行ってずっと先かな」
 二人は分岐路の傍らで立ち止まって、ぐるりと三叉路の先を見渡した。
 この分岐路は北、北西、北東の三方向に延びていて、各区画への進入口であると同時にメインストリートになっている。全てが計画済みで作られているので、構造は至極単純で分かりやすい。
 分かりやすいが、しかし。
「なんて広さだ……」
 橋を渡ってからかなり歩いた気がするが、まだまだ高等部の建物までは遠そうだった。
「でも、まだ拡張する計画があるみたいだよ」
「……これ以上何を作るんだよ」
「航空実験場とか、宇宙開発の関係の施設も作るんだって」
 それは、一体どれだけの資金が使われる事になるのだろうか。
 それを考えると溜息をつくしかなかった。
「あ、ほら、あれが高等部だよきっと」
 そうこうしているうちに高等部が見えてきたらしい。はしゃぐ沙彩の言葉に適当に相槌を打ちながら、しかし都樹は別の事を考えていた。
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2004年10月29日

E.E.E.006

 体調激悪。座ってるのも辛いです……。
 原稿用紙1枚。

− ─ ── ────────── ── ─ −

「凄いなあ」 
 惚けた様に言う都樹に、そうだねえと隣を歩く沙彩が相槌を打つ。
「映像では見たけど……実物はやっぱり違うな」
 テレビやネットでも良く話題になっていたので、写真や動画で見る機会は多かった。だがやはり、実際に目の当たりにすると感嘆の息を漏らさずにはいられない。この迫力は肌で感じなければわからなかっただろう。
 そんなとりとめのない話をしながら歩いていると、それぞれの区画への分岐路に出た。
 海上学園都市嶺鳳は、主に五つの区画に分かれている。
 都市の居住区である海岸側の南区。分岐路があり、飲食店などが並ぶ中央区。学校などの教育機関が立ち並ぶ西区に、研究所や高度科学実験を行う施設が存在する東区。そしてメガフロートの中枢であり、管理運営施設が存在する北区だ。
 上空から見れば、丁度その形が正五角形の様に見えるはずだった。
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2004年10月28日

E.E.E.005

 ようやく書き上げ。体調悪くて全然書けないので小出しにしてごまかし。
 原稿用紙2枚。

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 まず最初に目に入るのは、広い広い橋架だ。
 メガフロートと海岸を接続するメインストリート。幅五十メートル近いその橋は、既に多くの生徒が学園へ向かっていて、慌ただしい喧騒に包まれていた。車道も同様で、盛んにバスや自動車が通り過ぎて行く。流石に市街地ほど混雑しているわけではないものの、一つのメガフロートに行き来する交通量としては破格のものだろう。この風景を見るだけでも、この学園都市がいかに栄えているかが分かる。
 歩道をのんびりと歩きながら、都樹はその全景を視界に収めた。
 都市がそこにある。
 聳え立つビルの群れ。必要以上に高いビルはない。広大な面積を確保できるメガフロートでは、その必要性が無いからだ。しかし、計算され、調和を持った建造物の群れは、規模は小さくとも――そこが一つの都市なのだと納得させられるだけの威容を備えていた。
 学園都市と言う言葉に厳密な定義はない。正確には研究学園都市と呼称するのだろうが――この嶺鳳学園にあるのは教育機関と研究施設、そしてそこで生活する人々のための住居が殆である。後は僅かばかりのレクリエーションセンターがあり、中央区画に飲食店やら本屋やらが申し訳程度に並んでいるだけだ。
 都市と言うには余りにも小さい。しかしそこに人が住み、労働する人間が居る場所を都市と定義するのならば、この場所は確かに一つの街であると言えた。
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2004年10月27日

E.E.E.004

 一日遅れが二日遅れになりつつある今日この頃。
 原稿用紙2枚。

− ─ ── ────────── ── ─ −

 メガフロート構想と言うものがある。
 港や空港、発電所などの施設を建設できる適地の不足。埋め立てによる用地確保の困難。主にそれらを解決する技術として、前世紀末に開発されたものだ。
 要するに海面に巨大な板を浮かべて、それを地面にしてしまおうと言う構想である。メガフロートのメガは巨大。フロートは浮体。超大型浮体式構造物(メガフロート)の名前そのままの技術だ。
 嶺鳳学園もそうしたメガフロートの一つだった。

 海上学園都市、嶺鳳学園。
 ありとあらゆる分野の優秀な研究者を育てると言う目的と、教育機関を中心とした学園都市を作り上げると言うコンセプト。ある財閥によって提唱計画され、実に五年をかけて建造された海上施設群。嶺鳳学園はその中心部として存在している。
 この学園にはおよそ教育と言う言葉の全てが詰め込まれており、基本的な教育施設だけでも初等部から大学院までが存在する。それ以外にも専門学部、幼等部、英才教育専門の施設から果ては隠秘学部やら超心理学研究所まで――とにかく多種多様な教育、研究施設があるのを売りにしていた。
 その高等部も本来ならば他の施設同様、今年度の初頭から運用を開始されるはずだった。
 しかし完成間際と言うところ大きな事故が発生し、その影響を受けて半年近くの工期延長を余儀なくされていたのである。
 そうして半年。
 予定は遅れに遅れたが、嶺鳳学園高等部は後期からの運用開始が決定され、ようやく日の目を見る事となった。
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2004年10月26日

E.E.E.003

 四日目も期日オーバー。書いてるのは27日です。あはははは。
 今回はとっても難産でした。どうも私は「日常」と「会話」が致命的に書けないらしい。要修練だ、これは。テンポ悪いしなあ。
 原稿用紙2枚。

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 しかしそれを別にすれば、沙彩は何処にでも居る、ごくごく普通の女子高生に過ぎない。母親がハーフなので彼女自身はクォーターだとか、実は結構なお嬢様だとか、そういう事は瑣末事だ。
 だから今の状況を客観的に見れば、かなり普通じゃないんだろうなと彼は思った。
「ほらほら、起きた起きた。早く着替えないと間に合わないよ」
 そんな事を言って毛布を引っぺがされる。
「わかった、起きるって――……あれ、でも」
 ふと疑問が頭を掠める。普段沙彩が部屋に来るのは大体八時五分頃。さらに最近は五十分に目覚ましをセットして、自分で起きるようにしていた。しかし今日は明らかに早い。目覚ましが鳴る前に沙彩が来ているのが何よりの証拠だ。
「何でこんな早いんだ?」
 と疑問を口にすると、そっけなく答えが返ってきた。
「今日から新学期。新校舎に移るでしょ」
 ――ああ、そうだった。
 今日から後期過程が始まり、同時に新しく建造された総合学院の校舎へと移る事になっている。そこは旧学院よりも遠い――と言うより、少々変わった場所に建っているので、早めに家を出ないといけないのだ。
 おそらく今の時間でもギリギリなのだろう。沙彩がさっさと支度をしろと急かしてくる。
 唯一無二の、貴重で甘美な限られた睡眠時間が短くなってしまう。
 移転なんてまったくもって迷惑な話だな、と彼は思った。
「下で待ってるから」
 それだけ伝えると、彼女は身を翻してドアの方へ歩いていった。
 そのままドアを閉めようとして、あ、と声を漏らす。
 何時もの儀式。くるりと振り返って、忘れていたその言葉を付け加えた。
「おはよ、都樹(みやき)
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2004年10月25日

E.E.E.002

 三日目にして期日オーバー。書いてるのは26日です。
 主人公組の名前を暫定。峰野都樹(みねのみやき)綾識沙彩(あやおりさや)ってことでひとつ。多分実在する名前。たぶん。
 原稿用紙4枚。

− ─ ── ────────── ── ─ −

 時刻は朝。平均的な学生なら、よろよろと体を引き摺って起きだす頃だ。
 何はともあれ目が覚めてしまったので、枕元に置かれている時計に手を伸ばして、正確な時間を確認しようとする。寝転んだまま手を伸ばしているせいで、その辺の物がベッドの下に転げ落ちたりするのは何時もの事。ついでに自分の頭の上にも落ちてくるのも、やはり何時もの事だ。なので気にしない。
 そうして、散々モノを掻き分けて手にした時計によると。
 七時四十六分。予定よりも三分三十秒ほど早かった。
「……寝直そう」
 朝の三分は何物にも換え難く貴重だ。その時間を無為に消費するのは、七つの大罪より冒涜的で愚かしい事。これは、今味わっている苦しみを僅かでも軽減させるために使うべきだ。
 と、僅か三秒で自己弁護を終了すると、彼は本格的に寝直そうと毛布を被り、
「起きろー――!」
 闖入者の蹴撃を受けて意識を手放した。

 彼女、綾識沙彩(あやおりさや)は、いわゆる幼馴染だった。
 何時からの付き合いかと言えば、間違いなく生まれた時からの付き合いだし、ある意味生まれる前からの腐れ縁だと言えない事もない。馴染みも馴染み、正真正銘の幼馴染そのものだ。
 生まれる前からの縁と言っても、別に深い事情があるわけではない。要するに親同士が非常に仲の良い、それこそ生涯の親友とでも言うべき間柄で、自分達の生前から家族ぐるみのお付き合いだった――とそれだけの話だ。そんな関係だから、家が隣同士なのも、その間にあるべき隔壁の代わりに通路が作られていたりするのも、当然といえば当然の事だった。
 なので、こうやって朝起こしに来る事も十分ありえるんだろうけど。
「幼馴染の女の子が毎朝起こしに来るってのは、あまりにもベター過ぎやしないか」
「誰に言ってんの」
 そう溜息を吐きながら言うのは、件の沙彩だ。
 琥珀色の瞳がまず、何よりも印象に残る。
 長く、腰まで届く髪は癖のないストレート。それも眼と同じく、薄い色彩を湛えて輝いていた。
 女性にしては若干長身の、しなやかさを感じさせる肢体を隠すのは紫紺を基調にした制服。どこか実直な、聖職者(クレリック)の礼装のようなその服は、島国離れした容姿の彼女に良く似合う。
 美しい、と評するのは違う。強い存在感を持った少女。言うなればそんな娘だ。
 確かに顔の造形は整っているし、スタイルも良い。間違いなく美人だ。それは老若男女、誰でも認めることろだろう。
 しかし、彼女の本質――魅力はまた、別のところにある。
 強い、周囲を否応無しに引き込む存在感。そんなものが彼女には備わっていた。
 例えば、街で何気なく視界に入った時、ついそちらに目をやってしまったりする。男性なら僅かでも意識せずには居られなかったり。同姓ならば、憧憬や嫉妬の視線をついつい浴びせてしまったり。彼女が声を発すれば、それに意識を向けずには居られなかったり――。
 人の注目を、何をせずとも自然に集めるある種の能力。
 カリスマ――そう表現されるものを持つ少女。
 彼女、綾織沙彩は、そんな印象的な女の子だった。
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2004年10月24日

E.E.E.001

 書いてたら消えた。やる気なくなった。
 でも書いてみたらすらすら行けた。ちなみに非常に眠かったときに書いた。凄いそのまんまな文になってるような気がする。無駄に眠そうなところが。
 原稿用紙3枚、46行815文字。

− ─ ── ────────── ── ─ −

 睡眠。それはある種の生物に備わる身体機能の一つである。
 その起源や詳しいメカニズムは未だ完全には解明されていないが、説得力のある仮説、一般論は存在する。つまり、身体の機能を統制するために存在する管理ネットワーク器官――脳の休息のため、と言うものだ。余り知られていないが、脳と言う器官は非常に大量の糖分、エネルギーを消費しながら活動している。多くのエネルギーを消費すると言う事は、その分疲れやすいと言う事に等価であり、同時にそれは、疲れを癒すための休息が多く必要になると言う事に他ならない。特に人間は不均等なほど巨大な脳を持ち、その脳容量は体長二メートルに満たない生物としては規格外だ。当然、必要な睡眠時間は他生物よりも多くなる。
 人間はその大容量の脳によって知性を獲得した。旧約聖書・創世記に曰く、知性はアダムとイヴが禁断の果実である知恵の実を食べた事により得たものだという。
 それだけならば知恵の実はすばらしい果実だったのだろう。しかし知恵の実は、同時に多くの苦しみをも人間に与えた。それは知性の獲得による弊害、知能によって複雑化した思考によって生み出されたものだ。故に人々はそれを代償として甘受している。原罪の一部と言ってもいい。人間の宿命であるのなら、それは受け入れるべきものだから。
 だが、しかし。不必要なまでに睡眠を強要されるそれは、まったくもって許しがたい、と彼は考えるのだ。
 なるほど、大脳の巨大化によって、より多くの睡眠が必要になるのは当然の事だろう。それ自体に問題があると考えているわけではない。脳が正常に機能し、高次脳機能を持つ人間が生きるためにはそれは必要不可欠だろう。それに不満があるわけではない。それは良い。
 だがしかし、しかしだ。起床時にこんなに苦痛を受けるのは理不尽であるまいか。
 知恵の実によってもたらされた苦痛の中でも、この苦しみは最も辛いものに違いない、と彼はそう思った。
「今、何時だ……」
 つまり眠かった。
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2004年10月23日

E.E.E.000

 「毎日原稿用紙一枚でも小説を書こう」計画初日。
 何時まで続くか見ものです。くふふ。
 加筆したら3倍になった。ついでに挿絵(?)も。何でこうなってるんだ。

− ─ ── ────────── ── ─ −

 この街は致命的なまでに腐りきっていた。
 人々は暮らしている。当然のように会社に行き、学校へ行き、詰まらないほど掛け替えのない日々を過ごしながら、ただただ懸命に日常を謳歌せんと足掻き続けている。
 それは間違いなく理想的な街の姿だろう。多少の犯罪、多少の思惑が介在するのは何時だろうと何処だろうと変わる事はない。それも人が暮らせば必然的に起こり得る事、間違いなく正常な日常の一部だ。故に、それが致命的な毒と化す事はない。
 そこには人による正しき営みが在った。
 だからこそ、腐蝕は埒外の者には判りやすい。
 そう、例えば――まるで人以外の生き物を感じない、その違和感とか。
 死んでいる。()んでいる。()んでいる。
 死んでいるのだ。道端に植わる街路樹も。肌を撫でる空気も。セメントと砂砂利(すなじゃり)の混合物に覆われた大地も、聳える石と鉄の塊に抉り取られた空も。人以外の全てが見えない所で、苦悶を上げる事もなく完膚なまでに死に絶え、朽ち果て、腐り堕ちていた。
 それは世界が死んでいるということ――。
 人々は気付かない。それが自然故に。何十年と言う年月をかけて、徐々に徐々に侵されたかがために。緩慢に侵蝕する猛毒はその危険性を悟らせない。毒は毒ゆえに毒なのだ。まず始めに感覚を潰し、四肢を殺し、最後には芯の髄まで腐蝕し穿ち焼き滅ぼす。過去数十年、人はこの異常性に気付く事はなく、そして今なお気付いていない。
 ――この街は致命的なまでに腐りきっていた。

E.E.E.000「最早、手遅れか」
 宵闇の摩天楼。その登頂に人形(ひとがた)が在った。
 異質。まず感じるとすればその言葉が当てはまる。藍いスーツで身を固めたその風体は、現代の尖塔が立ち並ぶ情景からは剥離して――しかし、纏い従える持つ空気のせいか、紛れる筈もないはずのその風景に奇妙なほど溶け込んでいる。矛盾した融和、存在そのものの異質感。それがその人影を人ならざるものに見せていた。
 その相貌は零下にして麗華であり、紫紺の長髪は暮れる世界の中でなお暗い。
 女性だ。
 街並みを睥睨する視線は、幼さを感じさせる体躯とは酷く不釣合いだった。
「空虚だな。死んだ世界とは、ここまで寂しいものか」 
 感情を表現する言葉とは裏腹に、街を眺める少女の顔に感情らしい感情は浮かんでいない。そこにはただただ静謐さが湛えられているだけだ。機械的と言うわけでも、人形の様な能面と言う訳でもないが、しかし――その表情は酷く非人間的な印象があった。
 そこには人間に必要な何かが、決定的に欠けている。
「まるで真空の如き街――」
 呟く様な言葉は鈴の音の様に美しく、均一な音色で響く。
 その声は空気を震わす事はあっても、何かに残る事はない。声を運ぶ風も、宵藍にその彩を変えつつある天蓋も、最早その声を聞くことは出来ない。表面上は何も変わりなく、全てが正常に見えたとしても、世界を構成する要素は根源の部分で朽ち果てている。何もかもが伽藍洞(がらんどう)で、要素として機能していない街。ここはそういう場所だ。
 世界が死ぬとはつまり、そう言う事だった。しかし――
「しかし、人の営みは続いている」
 そこで初めて、少女は感情らしいものを垣間見せた。
 人間。万物が死に絶えたこの街で、人だけは変わらぬ営みを続けている。勉学に励みながら暗澹とした将来に思いを馳せ、社会の流れに翻弄されつつも抗い競争し。伴侶を見つけ、子供を生み、その血を脈々と受け継がせている。何千、何万と続いた営みを、多少形を変えたとはいえ――確実にそれを続けているのだ。
 当然のその日常は、しかしこの街では異常に他ならない。
 世界が死に絶えても生き続ける人間は。
 彼らは最早、この世界の一部ではないのかもしれない。
 ――例えそうだとしても、私には関係の無い事。
 そう、関係は無い。関係する事は無い。少女は観測者。ただ全てを俯瞰し、記憶し、思考するために在る。彼女にとって全ては観測対象であり、銀幕の中の出来事に等しい。例えこの街がどうなろうとも、少女は行く末を見届けるだけである。
 全ては空虚で無意味で乾燥とした人形劇。
 ――ならば、これから始るのもただの狂想残酷人形劇(グランギニョル)か。
 少女は自嘲の笑みを浮かべ、その思考を打ち切った。
 日が沈む。
 やがて宵闇は暗闇に成り代わる事もなく、途切れる事のない街の灯りに塗り潰されるだろう。今宵、遂に世界を繋ぎ止めていた最後の枷が腐滅する。そうなれば遅かれ早かれ、人々も影響を受けずにはいられなくなる。
 最早、この街がどうなるか――彼女にも予測する事は出来ない。
 世界の終わりが始まる。
posted by Titel at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | E.E.E. | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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