2004年10月23日

E.E.E.000

 「毎日原稿用紙一枚でも小説を書こう」計画初日。
 何時まで続くか見ものです。くふふ。
 加筆したら3倍になった。ついでに挿絵(?)も。何でこうなってるんだ。

− ─ ── ────────── ── ─ −

 この街は致命的なまでに腐りきっていた。
 人々は暮らしている。当然のように会社に行き、学校へ行き、詰まらないほど掛け替えのない日々を過ごしながら、ただただ懸命に日常を謳歌せんと足掻き続けている。
 それは間違いなく理想的な街の姿だろう。多少の犯罪、多少の思惑が介在するのは何時だろうと何処だろうと変わる事はない。それも人が暮らせば必然的に起こり得る事、間違いなく正常な日常の一部だ。故に、それが致命的な毒と化す事はない。
 そこには人による正しき営みが在った。
 だからこそ、腐蝕は埒外の者には判りやすい。
 そう、例えば――まるで人以外の生き物を感じない、その違和感とか。
 死んでいる。()んでいる。()んでいる。
 死んでいるのだ。道端に植わる街路樹も。肌を撫でる空気も。セメントと砂砂利(すなじゃり)の混合物に覆われた大地も、聳える石と鉄の塊に抉り取られた空も。人以外の全てが見えない所で、苦悶を上げる事もなく完膚なまでに死に絶え、朽ち果て、腐り堕ちていた。
 それは世界が死んでいるということ――。
 人々は気付かない。それが自然故に。何十年と言う年月をかけて、徐々に徐々に侵されたかがために。緩慢に侵蝕する猛毒はその危険性を悟らせない。毒は毒ゆえに毒なのだ。まず始めに感覚を潰し、四肢を殺し、最後には芯の髄まで腐蝕し穿ち焼き滅ぼす。過去数十年、人はこの異常性に気付く事はなく、そして今なお気付いていない。
 ――この街は致命的なまでに腐りきっていた。

E.E.E.000「最早、手遅れか」
 宵闇の摩天楼。その登頂に人形(ひとがた)が在った。
 異質。まず感じるとすればその言葉が当てはまる。藍いスーツで身を固めたその風体は、現代の尖塔が立ち並ぶ情景からは剥離して――しかし、纏い従える持つ空気のせいか、紛れる筈もないはずのその風景に奇妙なほど溶け込んでいる。矛盾した融和、存在そのものの異質感。それがその人影を人ならざるものに見せていた。
 その相貌は零下にして麗華であり、紫紺の長髪は暮れる世界の中でなお暗い。
 女性だ。
 街並みを睥睨する視線は、幼さを感じさせる体躯とは酷く不釣合いだった。
「空虚だな。死んだ世界とは、ここまで寂しいものか」 
 感情を表現する言葉とは裏腹に、街を眺める少女の顔に感情らしい感情は浮かんでいない。そこにはただただ静謐さが湛えられているだけだ。機械的と言うわけでも、人形の様な能面と言う訳でもないが、しかし――その表情は酷く非人間的な印象があった。
 そこには人間に必要な何かが、決定的に欠けている。
「まるで真空の如き街――」
 呟く様な言葉は鈴の音の様に美しく、均一な音色で響く。
 その声は空気を震わす事はあっても、何かに残る事はない。声を運ぶ風も、宵藍にその彩を変えつつある天蓋も、最早その声を聞くことは出来ない。表面上は何も変わりなく、全てが正常に見えたとしても、世界を構成する要素は根源の部分で朽ち果てている。何もかもが伽藍洞(がらんどう)で、要素として機能していない街。ここはそういう場所だ。
 世界が死ぬとはつまり、そう言う事だった。しかし――
「しかし、人の営みは続いている」
 そこで初めて、少女は感情らしいものを垣間見せた。
 人間。万物が死に絶えたこの街で、人だけは変わらぬ営みを続けている。勉学に励みながら暗澹とした将来に思いを馳せ、社会の流れに翻弄されつつも抗い競争し。伴侶を見つけ、子供を生み、その血を脈々と受け継がせている。何千、何万と続いた営みを、多少形を変えたとはいえ――確実にそれを続けているのだ。
 当然のその日常は、しかしこの街では異常に他ならない。
 世界が死に絶えても生き続ける人間は。
 彼らは最早、この世界の一部ではないのかもしれない。
 ――例えそうだとしても、私には関係の無い事。
 そう、関係は無い。関係する事は無い。少女は観測者。ただ全てを俯瞰し、記憶し、思考するために在る。彼女にとって全ては観測対象であり、銀幕の中の出来事に等しい。例えこの街がどうなろうとも、少女は行く末を見届けるだけである。
 全ては空虚で無意味で乾燥とした人形劇。
 ――ならば、これから始るのもただの狂想残酷人形劇(グランギニョル)か。
 少女は自嘲の笑みを浮かべ、その思考を打ち切った。
 日が沈む。
 やがて宵闇は暗闇に成り代わる事もなく、途切れる事のない街の灯りに塗り潰されるだろう。今宵、遂に世界を繋ぎ止めていた最後の枷が腐滅する。そうなれば遅かれ早かれ、人々も影響を受けずにはいられなくなる。
 最早、この街がどうなるか――彼女にも予測する事は出来ない。
 世界の終わりが始まる。
posted by Titel at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | E.E.E. | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

地震

 久々に地震を体感した。
 今も時々揺れているが、震度2か3と言ったところ。全くたいした事はないのだが、あまりにも珍しいので正直驚くやら不安になるやらである。体感したのは10年ぶりくらいだろう。あまり揺れてほしくないもんだ。
 
posted by Titel at 18:19| Comment(0) | TrackBack(1) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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